読書で癒しを…ちょっと不思議だけど優しくて心が温まる短編小説2作
- むぎちゃ
- 2023年7月28日
- 読了時間: 3分

今回は、ちょっと不思議で奇妙だけど心が温まる短編小説を2作紹介します。
私は図書館をよく利用するのですが、返却日までそれほど本を読む時間をつくれないなぁというときは、隙間時間にも読みやすい短編小説を借ります。
これから紹介する2作品は、そんなふうに図書館で出会った作品です。
①「モノレールねこ」加納朋子(文春文庫)
おすすめポイント
◆絆をテーマに、日常の中に潜む非日常の世界が描かれた作品
◆癒されたい、優しい気持ちに触れたい人におすすめ
◆寂しくも温かい空気感
8編からなる短編集。
家族や友達など大切な人との絆を感じる、ほどよい非日常感のある優しい物語です。
どのお話も生と死が描かれているので、温かいだけでなく切なさ、寂しさも。
ただ、悲しい描写がありながらも一貫して「ほっこりさ」があるので、心が沈むというわけではなく、さらっと読みやすく、最後には心が温かくなります。

この作品の好きなところは、「こうきたか!」と思ってしまうほど様々な視点での人の絆が描かれているところです。
とくに「バルタン最期の日」なんて、飼われているザリガニ目線。いろんなレビューサイトでも言われているのですが、ザリガニに泣かされるなんて、、なお話です。
ネタバレになるので詳しくは書けませんが、世の中のペットたちがみんな、こんな風に思えるように暮らしてくれてたらいいな…なんてしみじみ。

小学生のときにメダカを飼った経験しかない私でもこんなに感動するので、きっと今一緒に暮らしている人にとっては、ものすごく心にくるものがあると思います。
最初は家族を冷たい目で見ていたザリガニが、必死に頑張るラストがもう…。

1番心に刺さったのは「セイムタイム・ネクストイヤー」というお話。
子どもをなくした母親が年に1度、亡くなった子どもと会うとっても悲しい物語ではあるのですが、優しさが詰まった作品です。
こちらもネタバレになってしまうから、詳しく語れないのが悔しい…。
最後も切なさは残りますが、それでも前向きな気持ちをくれる物語です。
癒されたい、優しい気持ちに触れたいときにどうぞ。
②「リライブ」小路幸也(新潮文庫)
おすすめポイント
◆人生1番の後悔を生き返ってやり直す、あたたかくも切ない物語
◆人それぞれの幸せのカタチが切なくて愛しい
◆ファンタジー要素強め
死にゆく人の思い出を食べる謎の存在“バク”。思い出を渡す代わりに、人生で後悔していることをやり直しできる言われ、2度目の人生を歩んだ7人の物語。
誰でも思ったことのある「あのとき違う選択をしていたら」。
この作品での2度目の人生とは、後悔していた瞬間からスタート。ただ、バクに思い出を渡しているため、巻き戻った時点以降の1度目の人生の記憶は無い状態。
2度目の人生を終えたときに、人生をやり直したことと1度目の人生の記憶を思い出すという設定です。

よくある人生やり直しの話かと思ったら、それだけではない仕掛けがあったりもして。
やり直しのチャンスをもらうのにも、なにやら裏があるんですね。
面白いのは、話が第2の人生からスタートするので、第1の人生と何が変化しているのか分からないまま話が進んでいくところ。
何をやり直したんだろう?と想像しながら読み進めていく楽しさがあります。
そして、第2の人生を終えたあとに1度目の人生との振り返りがあるのですが、予想外の結末ばかり。
人それぞれでまったく違う「幸せのカタチ」があることをものすごく感じさせられて、胸がぎゅっとします。

すべてを自分の都合のいいようにするんじゃなく、たったひとつの1番の望みを叶えるために。そして、周りの人の幸せも考えて選択する。
多くを望みすぎない、今の状況でできる最大限の幸せをつかむ登場人物たちの姿がかっこいいなと思いました。
人生をやり直せるなら、自分はどの瞬間に戻るだろう?と思わず考えたくなる作品です。
Comments